僕の知らない横顔



ばたん、と柔らかい絨毯に重々しい音が響いた。
しんと静まり返った館内故に、迷惑を掛けてしまったかと想い、辺りを見渡すと、平日の午前中、利用客も少ないようだった。
男がひとり。
天井から床までの大きな硝子窓から木漏れ陽がきら、きら、ひかる。
本棚の陰に隠れた最奥の椅子に腰を掛け、頬杖を付き、分厚い本に視線を落としている。
さきほどの音は気にも留めていないようだった。
他人を見掛けで判断するなど謂れ無いが、限度がある。小難しい本にほんとうに似合わない外見。肩まで伸びた朧銀、前髪は天を仰ぐ草木のように重力に逆らって結われている。生粋の日本人では無いのだろう、翡翠色の瞳が伏せた瞼から覗く。それを隠すようにか、逆ナイロールフレームの眼鏡。ときどき反射する。
まるでしらないひとのようだ。


「…となり、いい?」
「…あー」


予想通りだが、振り向きもしない。
他の席が空いていることも、誰が声を掛けたかも、きっと彼には届いていない。
刻まれた眉間の線、真剣な眼、いつもと同じでいつもと違う。
はやく、はやくぼくの知るきみの顔が見たい。


「あ?…ひ、ばり?」


双眸がぼくを捉えた。
驚愕と困惑の色を浮かべた顔が、ふと笑う。
その顔を待っていたんだ。
















並盛市立情報図書館の平日の午前中は混み合わない設定で。地元の図書館は午前中から混みます。
うちとこの恭弥さんは獄を見るのが好き。あと髪を梳くのも好き。獄の頭は恭弥さんが切るといいと想います。
そして恭弥さんの服は獄が選べばいいと想います(半同棲とかすきです)



20090106 myogaAyuco.