「やまもと、」
補習でツナとふたりっきりの教室。
向かい合って答え教え合ったり、笑い合ったりしていたらいつの間にか教室にはみかん色の光が差し込んでいた。
真面目にやんねーと太陽が出てるうちに帰れないと本能が察知したらしくさっきから無言で問題を解いていた。
数分もしないうちにオレは飽きて(というより躓いて)、窓際に腰を掛け、部活に励む仲間を見ていた。
そうしたら声を掛けられた。
んーだか、あーだか、生半可な返事をしながら声の主に視線をやると、そいつはプリントと向かい合ってた。
振り向かずともオレの視線がが自分にあることを感じて、再び言葉を繋げた。
「やまもと、オレね、獄寺くんが好きなんだ。」
告白
え。
ツナが獄寺を。
態々言うってことはきっと友情じゃなくって愛情なんだろう。
それくらいはオレでもわかる。
「あー…獄寺には…」
「まだ。まずは山本に云おうと思って。」
まだツナの視線はプリントにある。
まずは、まるで牽制のようだ。
「牽制。」
「え?」
考えていることがわかったのかと、ぎくりとする。
そこでやっと、ツナがプリントから目を離し、ゆっくりとオレのほうへ視線を送る。
見たことのない親友の、顔。そんな男らしい顔してたっけ。
はっと息を呑む。
「牽制じゃないよ。」
「じゃあ…」
「山本、野球で牽制球ってどういうときに投げる?」
「どういうときってそりゃ、ランナーの盗塁を防ぐときとか…」
「だよね。だから牽制じゃないんだよ。」
どういう…、
音にならなかったオレの言葉と被ってツナが、しっかりと、オレの目を見る。
「だって山本はまだランナーじゃない。ランナーに為れて無いから。」
ああ、わかってるんだ。
きっと。たぶん。ぜんぶ。なにもかもを。
わかってて、いや、わかってるから言って来たんだろう。
ツナは知ってるんだ。
「山本がどう思ってたとしても、獄寺くんには伝わらない。。幾ら打ってもファールじゃ塁には進めないしね。」
どう思ったとしても。
気持ちはバレバレらしいな。
最初に誤魔化し損ねたオレは言い逃れることも、当たってるだけに言い返すことも、出来ない。
無力に拳を握るだけ。
「何も言わないなんてフェアじゃないだろ?幾ら、ランナーじゃないからって試合前の挨拶は必要だからね。」
口元だけに笑みを浮かべたツナ。
へらへらと上っ面だけの笑いしか浮かべられないオレ。
がたん、と音を立ててツナが立ち上がってプリントを手にした。
「オレ、終ったから先生に出して先帰るね。獄寺くんが待ってるし。」
今度はいつもの、見知ったツナの笑い方。
本気なんだな。
荷物を抱え、足早に教室を出ていくツナを見送ってから、ぺたりとその場にへたり込んだ。
あんなぼろ糞に言われて何も言えないなんてオレらしくねえ。
「かっこわりーのな。」
せめて、ランナーに為れるように。
一発逆転ホームラン狙ってな。
普通の告白にしたくなかったからこんな告白にしてみた。
三つ巴がすきだからやっぱり三つ巴になってしまう。
横恋慕って素晴らしい愛の形!
高校野球が好きだから、野球の話が入れられて嬉しい!
20081215 myogaAyuco.