凹凸



がらり、とノックも無しに扉があいた。
此処にそんな風に来るのはひとりしかいない。

「おい、まだ1時間目じゃねーか」

声を掛けても此方を見ようともせず、ベッドへ一直線。

「隼人、」

溜め息交じりに、今度は名前を呼ぶ。締め切ったカーテンの隙間から白く細い腕を出し、ひらひらと振る。まったく、いつからこんな風になったんだか。素直で可愛いのは昔と夜だけってか。
カーテン越しにも聞こえるよう、もう一度、大きな溜め息を吐く。ハイバックチェアーに腰を掛けると、ギィ、と軋んだ。

「なあ、」

チャイムが鳴り、休み時間になった頃、まるで独り言のように小さな声が聞こえた。カーテンの隙間からベッドに座った隼人が見える。此方を向いているわけでもなく、ぶらぶらと垂らした足を眺めているようだった。

「なんだ」
「今日は暇、か?」
「週明けの職員会議があるくらいだ。」
「ふーん、」
「どうした?」
「別に」

そこで会話が途切れた。
そのまま、2時間目、3時間目、と時間だけが過ぎていった。

「おい隼人、そろそろ戻、れ…!」

くるりと椅子を回転させて顔をあげると隼人の顔があった。

「なんだ、気配を消して近付くなよ」
「…シャマル。」
「んあ?」
「…」
「どうした、隼人」
「…帰る」

踵を返し、あっという間に出て行ってしまった。なんだったんだ、と想った矢先に、閉じたばかりの扉が勢いよく開いた。そこには先程出て行った隼人がいて、

「シャマル!」

俺を呼ぶ声と共に隼人が振り被って、弧を描くようにしてきらりと光るものが手中に収まる。それと同時に隼人がつっかけた上履きを引き摺って小走りにさる音が聞こえた。
受け取ったものを覗き込むのと、銀色の鍵がひとつ。

「はは、素直じゃねえな、坊っちゃんは。」

隼人の去って行った扉を愛おしそうに見つめながら、今夜使うであろう鍵を白衣のポケットに仕舞い込んだ。
















シャマルせんせお誕生日おめでとう!な小説のつもり。
隼人からのプレゼントは合鍵。
どうやって渡そうか、朝からうーんと悩んで結局何も言えずに渡しちゃったり…立ち去った隼人は自己嫌悪でいっぱいなのですが、帰ったらたっぷり可愛がって貰えるので…ね!
タイトルの「凹凸」は鍵と鍵穴の気持ちで…。別に卑猥な意味じゃないんだからね!w



20090209 myogaAyuco.